「テレワークになってから一日の歩数が3,000歩を切るようになった」「家から出ない日が続いて身体が固まっている気がする」「在宅だと休憩のタイミングがわからない」――こうしたテレワーク特有の身体的課題は、出社中心の働き方と比べて見過ごされやすいテーマです。
この記事では、総合病院にて勤務している現役の理学療法士として、テレワーク・在宅勤務に伴う身体の固さ・コリ・運動不足への10の疑問に、Q&A形式でお答えします。「環境より生活全体」を見直すヒントとして読んでみてください。
Q1. テレワークで身体が固まりやすいのはなぜですか?
大きな理由は「日常的な移動量の激減」です。出社していれば、駅まで歩く・電車内で立つ・社内を移動する・打ち合わせに行く――こうした意図せず動く時間が一日に数千歩分ありました。テレワークになるとこれがほぼゼロになり、座位時間が長時間連続化します。
筋肉や関節は動かさない時間が長いほど水分が減って固まりやすくなるとされ、これが「夕方の身体の重さ」「翌朝のこわばり」につながりやすい状態です。
Q2. テレワーク中の理想的な歩数は?
厚生労働省「健康日本21(第三次)」では、成人男性は1日8,000歩、成人女性は7,000歩が身体活動の目標値として示されています。テレワーク中は意識しないと3,000〜4,000歩で1日が終わってしまうことが珍しくありません。
難しければ、まず朝・昼・夕の3回×10分の散歩を習慣化するだけで合計約3,000歩 = 必要量の半分は確保できます。スマートフォンの歩数計でモニタリングすると効果的です。
Q3. 在宅で休憩を取りづらいのはどうしてですか?
テレワークでは、出社時のような「会議室への移動」「同僚との会話」「お昼の外出」など、休憩を促す自然な区切りがなくなるためです。気がついたら4時間連続でPCに向かっていた、というケースも多くなります。
対策は「タイマーで区切りを外部化する」こと。25分作業→5分休憩のポモドーロ式、または「1時間に1回スマホアラームを鳴らす」だけでも違いが出ます。
Q4. 在宅でできる「ながら運動」は何がいいですか?
30秒〜1分で完了する、特別な準備が要らないものから始めるのが続くコツです。
- 会議中にこっそり足首回し:両足首を10回ずつ内外
- 歯磨き中につま先立ち:1日2回×各1分
- 電子レンジを待つ間にスクワット:5〜10回
- ニュースや動画は立って観る:30分立つだけで姿勢筋が働く
「運動の時間を新たに作る」より「すでにある行動に運動を組み込む」方が継続率が高いとされています。
Q5. テレワークで足のむくみが気になります
座位を長時間続けると、ふくらはぎの「筋ポンプ作用」(静脈血を心臓に戻す働き)が低下し、下肢に血液や水分が滞留しやすくなります。これがむくみの一因です。
シンプルな対策:
- 1時間に1回、座ったままでかかと上げ下げを30回
- 足首をぐるぐる回す(各方向10回ずつ)
- 寝る前に5分、足を壁に立てかけて寝る
- 痛みやしびれを伴うむくみが続く場合は、医療機関を受診
Q6. 家族や同居人に気を使って動きづらい場合は?
「リビングでストレッチすると家族が気を使う」「マンション下階に響くのが気になる」――テレワーク特有の困りごとです。
音や動きが小さくても効果が高い動作を選ぶのがコツ:
- 椅子に座ったまま行う体幹の捻り運動
- 壁に手をついて静かに行うふくらはぎストレッチ
- 呼吸を意識した深呼吸+肩回し
- 朝・夕の散歩を1日のメインの運動時間に
Q7. 独居でテレワーク、人と話さない日が続くと身体にも影響しますか?
はい、影響することがあるとされています。会話は表情筋・嚥下筋・呼吸筋を動かす運動でもあり、人との接触が極端に少ないと、これらの筋活動量が低下することがあります。
対策としては:
- 音読・歌う・YouTubeに合わせて声を出すなど声を出す習慣を意識的に作る
- 週に1〜2回はオンライン会議を音声ありで参加する
- 近くのコンビニやカフェに行って店員さんと一言交わすだけでも違う
Q8. 夕方の身体の重さ・疲れが翌日まで残ります
テレワーク後に「お疲れさま」と立ち上がる時の身体の重さは、筋肉のこわばり + 浅い呼吸の積み重ねが大きな要因です。
夕方リセットのおすすめ:
- 仕事終わりに15〜20分の散歩(通勤の代わりの「リセット移動」)
- 湯船に10分浸かる(シャワーだけにしない)
- 就寝前に深呼吸を5回、ゆっくり吐く
- 翌日まで残るレベルの疲労が2週間以上続く場合は、内科や心療内科への相談も検討
身体のサインの読み方はセルフチェック記事もご参照ください。
Q9. テレワーク歴が長くなり、姿勢の崩れを実感します
テレワークによる姿勢の崩れは、「気をつけて直す」より「土台から整える」方が効果が安定するとされています。
具体的には:
- 椅子に座ったときの骨盤の傾きを整える(姿勢の土台記事参照)
- 正しい座り方の基準を確認する(正しい座り方の基準とメリット)
- 仕事環境の3点(椅子・机・モニター)を見直す(デスクワークQ&A)
Q10. 自分のテレワーク疲労、医療機関に相談すべきレベルですか?
次のサインがある場合は、自己流のセルフケアだけで様子を見ず、医療機関への相談をおすすめします。
- 夜寝ても朝の疲労感が抜けない状態が2週間以上続く
- 頭痛・めまい・不眠を伴う
- 気分の落ち込みが強い、仕事への集中力が大幅に低下
- 手足のしびれや麻痺感がある
- 動悸・息切れなど自律神経の乱れを思わせるサイン
身体症状の場合は整形外科やリハビリ専門職、精神症状を伴う場合は心療内科や産業医への相談を検討してください。
Avensの現場から
訪問でお会いするご家族からも「コロナ以降ずっとテレワークで、親の様子を見られる時間は増えたけど、自分の身体が固まってきた」というお話を聞きます。テレワークは生活全体の運動量を大きく変えてしまう働き方なので、「机に向かっている時の姿勢」より「机から離れている時間の過ごし方」を見直すことが、長く健康に続けるコツになると感じています。
まとめ
テレワークによる身体の固さ・運動不足・疲労感は、「姿勢を直す」だけでは解決しきれない、生活全体の課題です。歩く時間 × 区切り × 声を出す × 湯船の4点を意識的に組み込むだけで、夕方の身体の重さが変わってくる方が多い印象です。
まずできることから1つ選ぶなら、「朝・昼・夕で各10分ずつ歩く」を今週から始めてみてください。出社で自然にあった運動量を、意識的に取り戻すスタートになります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を行うものではありません。痛みやしびれが強い場合、症状が長く続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
参考にした情報源
本記事のテレワークと身体活動に関する考え方は、以下の公的機関の公開情報を参考に、一般読者向けに分かりやすく再構成したものです。
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」(成人男性 8,000歩 / 成人女性 7,000歩の目標値など)
- 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年改正・連続作業時間と小休止)
- 厚生労働省「健康日本21アクション支援システム」(旧 e-ヘルスネット)(身体活動・運動の一般情報)
- 公益社団法人 日本産業衛生学会(職場・在宅勤務の作業環境)
※本記事の数値はあくまで一般的な目安です。年齢・体格・既往歴により適切な対応は異なります。気になる症状がある場合は、医師・理学療法士などの専門職にご相談ください。
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