「立ち上がるときにひざが痛む」「階段の下りがつらい」「正座ができなくなった」――ひざの痛みは、年齢を重ねるほど多くの方が経験する不調のひとつです。一方で、若い世代でもスポーツや使いすぎで痛めることがあります。
この記事では、総合病院にて勤務している現役の理学療法士として、ひざが痛くなる主な原因・見逃せない受診の目安・今日からできるセルフケアを、わかりやすく解説します。
先に結論:ひざ痛は「使い方・筋力・体重」が深く関わる
ひざの痛みにはさまざまな原因がありますが、加齢による変化に加えて、ひざの使い方・まわりの筋力・体重が背景として深く関わっているケースが多く見られます。
- ひざは体重を支えながら曲げ伸ばしをくり返す関節で、負担が集中しやすい
- 太もも(特に前側)の筋力が落ちると、ひざへの負担が増えやすい
- 体重が増えると、その何倍もの力がひざにかかるとされている
つまりケアの方向性は、「ひざを支える筋肉を保つ」+「負担を減らす使い方・生活」が中心になります。
ひざが痛くなる主な原因

中高年に多い:変形性膝関節症(軟骨のすり減り)
中高年のひざ痛で代表的なのが変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)です。関節の軟骨が年齢とともにすり減り、立ち上がりや歩き始めに痛みが出やすいとされています。特に女性に多い傾向があります。
若い世代・運動時:使いすぎ・スポーツによる負担
若い世代やよく運動する方では、使いすぎ(オーバーユース)や、ジャンプ・ダッシュのくり返しによる負担でひざ周囲を痛めることがあります。準備運動不足や急な運動量の増加も関わるとされています。
共通の背景:筋力低下・体重・姿勢のクセ
年代を問わず、太ももの筋力低下・体重増加・姿勢や動作のクセはひざへの負担を高めます。身体を支える「土台」の考え方は姿勢の土台記事でも解説しています。ひざ単体ではなく、股関節や足首も含めた下半身全体で捉えることが大切です。
⚠️ 見逃せない「危険なひざ痛」のサイン
多くのひざ痛は経過を見ながらセルフケアで対応できますが、次のような場合は自己判断せず、早めに整形外科を受診してください。
- ひざが大きく腫れている・熱を持っている
- ケガのあとから強く痛む、ひざに力が入らない・崩れる
- ひざが引っかかって動かせない(ロッキング)
- 安静にしていても痛む、夜間に強く痛む
- 発熱を伴う、痛みがだんだん悪化している
- 数週間セルフケアを続けても改善しない
特に強い腫れ・熱感や、ケガの直後の痛みは、早めの受診が安心です。
ひざにやさしい習慣・5つ
- 太ももの筋肉を保つ:特に前側(大腿四頭筋)はひざを支える要
- 体重を増やしすぎない:わずかな減量でもひざの負担軽減につながるとされる
- 急に動かしすぎない:運動量は少しずつ増やし、準備運動を行う
- 正座・深いしゃがみ込みを避ける:ひざを深く曲げる姿勢は負担が大きい
- クッション性のある靴を選ぶ:歩行時の衝撃をやわらげる
「痛いから動かさない」と筋力がさらに落ち、かえって悪循環になることもあります。痛みの強い時期を除けば、痛くない範囲で動かすことが大切とされています。座り方の工夫は正しい座り方の記事も参考になります。
ひざを守るセルフケア3選

痛みのない範囲で、呼吸を止めずにゆっくり行いましょう。痛みが強まる場合は中止してください。
① 座って脚伸ばし(太もも前の運動)
イスに座り、片脚をゆっくり水平まで伸ばして5秒キープ、ゆっくり下ろす。左右各10回。ひざを支える太ももの前側を、関節に負担をかけずに鍛えられます。
② ひざ裏のばし(あおむけ)
あおむけで片脚を上げ、タオルを足裏にかけて手前に引き、もも裏〜ひざ裏を伸ばす。左右各20秒。もも裏の硬さはひざの動きにも影響するとされています。
③ お尻・股関節まわりの運動
横向きに寝て上の脚をゆっくり持ち上げて下ろす(左右各10回)。お尻や股関節の筋肉は、歩くときにひざを安定させる役割があります。
Avensの現場から
ひざ痛で相談される方の多くは、「ひざだけ」に意識が向きがちです。しかし実際には、お尻や股関節、足首の動きがうまく使えず、その分ひざに負担が集中しているケースが少なくありません。痛いひざをかばって動かさずにいると、太ももの筋力が落ちてさらに痛みやすくなる――この悪循環を、痛くない範囲の運動でゆるやかに断っていくことが、現場では大切だと感じています。
こんな時は専門家へ
セルフケアはあくまで一般的な目安です。次のような場合は、整形外科や理学療法士などの専門職に相談してください。
- 上で挙げた「危険なサイン」に当てはまる
- 強い腫れ・熱感・ひざが崩れる感じがある
- 数週間セルフケアを続けても改善しない
- くり返しひざが痛み、歩行や生活に支障が出ている
よくある質問
Q1. ひざが痛いとき、運動はしない方がいい?
強い痛みや腫れがある時期は無理をせず安静が基本ですが、落ち着いてきたら痛くない範囲で太ももの筋肉を保つ運動を続ける方がよいとされています。動かさずにいると筋力が落ち、かえって痛みやすくなることがあります。不安な場合は専門職に相談しましょう。
Q2. ひざのサポーターは使った方がいい?
歩行時の安心感が増したり、保温効果が期待できる場合があります。ただしサポーターだけで根本改善するわけではなく、筋力維持や使い方の見直しと併用するのが前提です。締めつけすぎないものを選び、合うかどうかは個人差があります。
Q3. 正座やしゃがむ動作は避けるべき?
正座や深いしゃがみ込みはひざを深く曲げるため負担が大きい姿勢です。痛みがある時期は避け、イス・洋式の生活を中心にすると負担を減らせます。痛みが落ち着いていても、長時間の正座はこまめに崩すとよいでしょう。
Q4. 階段の下りで痛むのはなぜ?
階段を下りるときは、体重の何倍もの力がひざにかかるとされ、太ももの前側で衝撃を受け止めます。ここの筋力が落ちていると痛みが出やすくなります。手すりを使う・一段ずつ下りるなどで負担を減らせます。
まとめ
ひざの痛みは、加齢による変化に加えて筋力・体重・使い方が深く関わります。多くは、太ももの筋肉を保ち、負担を減らす生活を続けることで付き合っていけるものです。
一方で、強い腫れ・熱感・ひざが崩れる・ロッキングなどがある場合は、迷わず整形外科へ。まず1つ実践するなら、「座って脚伸ばし」を今日から始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を行うものではありません。強い腫れ・熱感・ケガのあとの痛みや、症状が続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
参考にした情報源
本記事のひざの痛みに関する考え方は、以下の公的機関・学会の公開情報を参考に、一般読者向けに分かりやすく再構成したものです。
- 日本整形外科学会「変形性膝関節症」
- 日本整形外科学会 ロコモ ONLINE(ロコモティブシンドローム啓発)
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動」
- 日本理学療法士協会(理学療法における運動器評価の一般情報)
※本記事の内容はあくまで一般的な目安です。年齢・既往歴・症状により適切な対応は異なります。気になる症状がある場合は、医師・理学療法士などの専門職にご相談ください。
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