「急に肩が痛くなって腕が上がらない」「服を着るとき、髪を結ぶときに肩がつらい」「夜、肩が痛くて目が覚める」――こうした症状で多いのが、いわゆる四十肩・五十肩(医学的には肩関節周囲炎)です。
この記事では、総合病院にて勤務している現役の理学療法士として、四十肩・五十肩の症状の段階と、時期に合ったセルフケアの考え方を、わかりやすく解説します。肩こりとは異なる「肩関節そのものの痛み」である点がポイントです。
先に結論:四十肩・五十肩は「時期」に合ったケアが大切
四十肩・五十肩で最も大切なのは、痛みの「段階(時期)」に合わせてケアを変えることです。
- 痛みが強い時期は、無理に動かさず炎症を落ち着かせることが優先
- 痛みが和らいできた時期は、固まらないよう少しずつ動かすことが大切
- 時期を取り違えて「痛いのに無理に動かす」「動かせるのに安静にしすぎる」と、かえって長引くことがある
つまり、「今が痛みの強い時期か、動かしていける時期か」を見極めることが、回復への近道になります。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)とは?
四十肩・五十肩は、肩関節のまわりの組織に炎症が起こり、痛みと動かしにくさが生じる状態の通称です。40〜50歳代に多いことからこう呼ばれますが、医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれます。
はっきりした原因がわからないことも多く、加齢にともなう肩まわりの組織の変化が背景にあるとされています。多くは時間をかけて少しずつ軽快していくとされますが、放置すると肩が固まって動かしにくさが残ることもあるため、時期に応じたケアが大切です。肩こりとの違いについては肩甲骨セルフケアの記事もあわせてご覧ください。
症状の3つの段階

四十肩・五十肩は、大きく3つの段階を経て変化していくとされています(個人差があります)。
① 急性期(炎症期):痛みが強い時期
炎症が強く、動かしても動かさなくてもズキズキ痛む時期です。夜間の痛み(夜間痛)で眠れないこともあります。この時期は無理に動かさず、痛みをやわらげることが優先されます。
② 拘縮期(こうしゅくき):動かしにくい時期
強い痛みは少しずつ落ち着く一方で、肩が固まって動かしにくくなる時期です。腕が上がらない、後ろに手が回らないといった動きの制限が目立ちます。この時期は痛くない範囲で少しずつ動かすことが、固まりを防ぐうえで大切とされています。
③ 回復期:動きが戻ってくる時期
痛みがやわらぎ、少しずつ肩の動きが戻ってくる時期です。ストレッチや運動を続けて、動く範囲を取り戻していきます。回復には数ヶ月〜1年以上かかることもあるとされ、あせらず続けることが大切です。
⚠️ こんな肩の痛みは早めに受診を
肩の痛みは四十肩・五十肩以外が原因のこともあります。次のような場合は自己判断せず、整形外科を受診してください。
- 転倒・ぶつけたなど、はっきりしたケガのあとから痛む
- 腕や手にしびれ・力が入りにくさを伴う
- 肩が腫れている・熱を持っている、発熱を伴う
- 痛みがどんどん強くなる、両肩・他の関節も痛む
- 数週間たっても痛みがまったく変わらない
特にケガのあとの痛みや、しびれ・脱力を伴う場合は、別の原因が隠れていることがあるため早めの受診が安心です。
段階別ケアの考え方
- 急性期(痛みが強い):無理に動かさない。痛みで眠れない時は、クッションなどで腕を支えて楽な姿勢を探す
- 拘縮期(動かしにくい):痛くない範囲で「振り子運動」など軽い運動を少しずつ。お風呂で温めてから動かすと楽なことが多い
- 回復期(戻ってくる):ストレッチや運動の範囲を少しずつ広げ、元の動きを取り戻していく
「痛いから一切動かさない」を続けると、かえって肩が固まりやすくなります。一方で痛みの強い時期に無理をすると炎症が長引くこともあるため、時期の見極めが大切です。
肩にやさしいセルフケア3選

主に痛みが少し落ち着いた「拘縮期〜回復期」向けのケアです。痛みが強い急性期は無理をせず、痛みが増す場合は中止してください。
① 振り子運動(コッドマン体操)
テーブルなどに反対の手をつき、痛む側の腕を力を抜いてだらりと下げ、前後・左右・円を描くようにゆっくり揺らす。腕の重みで肩がほぐれ、関節に負担をかけずに動かせます。各方向10回程度。
② テーブルで前すべり(前方へのばす運動)
イスに座り、机やテーブルの前に向かいます。痛む側の手のひらをテーブルにのせ(手の下にタオルやふきんを敷くと滑りやすくなります)、体を前に傾けながら、手をテーブルの上を前へすべらせていきます。肩から腕が前方へやさしく伸びるのを感じたら、痛くない範囲で5〜10秒キープし、ゆっくり戻します。10回程度。腕を持ち上げず、テーブルで腕の重さを支えながら動かせるので、肩への負担が少なく取り組めます。
③ 壁つたい(腕を上げる練習)
壁に向かって立ち、指を壁に這わせるようにして、少しずつ腕を上へ伸ばす。届く高さに無理に到達しようとせず、痛くない範囲で。毎日続けると、上がる範囲が少しずつ変わっていきます。
Avensの現場から
四十肩・五十肩で相談される方の多くが、「痛いから動かさない方がいいのか、動かした方がいいのか分からない」と迷われています。実際、時期の見極めはとても大切で、痛みの強い時期に無理をしてこじらせる方もいれば、痛みが引いたのに怖くて動かさず肩が固まってしまう方もいます。その時々の状態に合わせて運動量を調整していくことが、現場では何より大切だと感じています。不安なときは一人で抱えず、専門職に相談してください。
こんな時は専門家へ
セルフケアはあくまで一般的な目安です。次のような場合は、整形外科や理学療法士などの専門職に相談してください。
- 上で挙げた「早めに受診を」のサインに当てはまる
- 夜間の痛みが強く、眠れない日が続く
- 数週間〜数ヶ月たっても動きが改善しない
- どの段階か分からず、ケアの仕方に迷う
よくある質問
Q1. 四十肩・五十肩は放っておいても自然に治りますか?
多くは時間をかけて少しずつ軽快していくとされていますが、放置すると肩が固まり、動かしにくさが残ることもあるとされています。回復を早め、後の動きを保つためにも、時期に合ったケアや、必要に応じた受診をおすすめします。回復には数ヶ月〜1年以上かかることもあります。
Q2. 温めるのと冷やすの、どちらがいい?
一般的に、急に強く痛む炎症の強い時期は冷やし、痛みが落ち着いて固まりが気になる時期は温めてから動かすのが目安とされています。お風呂で温まったあとは動かしやすくなることが多いです。心地よい方を選び、痛みが強い時期は無理をしないでください。
Q3. 痛くても動かした方がいいですか?
痛みの強い急性期は無理に動かさない方がよいとされています。痛みが落ち着いてきたら、痛くない範囲で少しずつ動かすことが、固まりを防ぐうえで大切です。「強い痛みを我慢して動かす」必要はありません。段階に迷う場合は専門職に相談しましょう。
Q4. 夜、肩が痛くて眠れません
夜間痛は急性期に多い症状です。痛む側の腕の下にクッションを入れて支える、横向きで痛む肩を上にするなど、肩が楽な姿勢を探すと和らぐことがあります。痛みで眠れない日が続く場合は、我慢せず整形外科に相談してください。
まとめ
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)は、急性期・拘縮期・回復期という段階を経て変化していきます。大切なのは、痛みの強い時期は無理をせず、落ち着いてきたら少しずつ動かす――時期に合わせてケアを変えることです。
一方で、ケガのあとの痛み・しびれ・脱力・発熱などを伴う場合は、別の原因が隠れていることもあるため、迷わず整形外科へ。あせらず、その時々の状態に合わせて付き合っていきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を行うものではありません。ケガのあとの痛み・しびれ・脱力・発熱を伴う場合や、症状が続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
参考にした情報源
本記事の四十肩・五十肩に関する考え方は、以下の公的機関・学会の公開情報を参考に、一般読者向けに分かりやすく再構成したものです。
- 日本整形外科学会「五十肩(肩関節周囲炎)」
- 日本整形外科学会「症状・病気をしらべる:肩の症状」
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動」
- 日本理学療法士協会(理学療法における運動器評価の一般情報)
※本記事の内容はあくまで一般的な目安です。年齢・既往歴・症状により適切な対応は異なります。気になる症状がある場合は、医師・理学療法士などの専門職にご相談ください。
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